この項の骨子
〇 人類の未来は新しい主体の世界史的形成にかかっている。
第3章 帝国の文明的野蛮か、多民族・多文化の共生するもう一つの世界か
「9・11事件」以後の現代世界の動向と選択肢
(一)新たな世界秩序の再編成に入ったブルジョア世界
多国籍金融独占資本の世界体制の特性
X.初学者のための用語集(広辞苑等々を参照に)
@ <神の手><自由放任>
アダム・スミス(1723〜90年)。イギリス・スコットランド出身。「道徳感情の理論」1759年、「国富論」1776年。スミスは古典派経済学の始祖といわれる。神の手とは、市場が需要と供給を調和的にバランスする機能を持つとし、それは神の摂理とする考え方。スミスは絶対王政の経済理論である重商主義が主張する富=貨幣(金・銀)観に対し、諸国民の富は労働生産物であるとした。また、重商主義が国家による貿易統制による貨幣集積をはかろうとしたのに対し、スミスは産業自由、自由貿易が産業の発展と生産力を高めると主張した<自由放任=厳密には先に重農主義者が唱えた、レッセーフェール>。育ちゆくブルジョア階級の理論として大きな影響力を持った。労働価値説による資本蓄積論、再生産� �はリカード、マルクスへと続く。
A アマルガム
ギリシャ語の「柔らかい物質」に由来。水銀と他の金属との合金。アマルガム法とは、水銀を用いて金・銀を抽出する方法。金銀鉱石を水銀に接触させてアマルガムを作り、これを蒸留して金または銀を回収する方法。
B 「最新・最高の段階」
レーニン「帝国主義論」の言葉。レーニンは自ら、ホブソンの「帝国主義論」とヒルファーディングの「金融資本論」の研究に負うところが大きいと言っている。尚、レーニン帝国主義論の表題である「資本主義の最高の段階としての帝国主義(平易な概説)」は初版本では「最高の段階としての」が「最新の階梯としての」となっていた。さて、資本主義の最高の段階としての帝国主義の定義。
1.経済生活の中で決定的役割を演ずる独占を作り出す迄に高度な発展段階に達した、生産と資本の集積。
2.銀行資本と産業資本の融合と、この「金融資本」を基礎とした、金融寡頭制の成立。
3.商品輸出とは区別される資本輸出が特に重要な意義を獲得すること。
� �.資本家の国際的独占団体が形成され、世界を分割し、そして
5.最大の資本主義列強による地球の領土的分割が完了していること。
帝国主義とは、独占体と金融資本との支配が形成され、資本輸出が卓越した意義を獲得し、国際トラストによる世界の分割が始まり、そして最大の資本主義諸国による地球の全領土の分割が完了した、そういう発展段階の資本主義である。
C 化体(かたい)
形をかえて他のものになること。有価証券の場合のように、権利とそれを表章する証券との間に認められる密接な結合関係を表現する語。「権利が証券に化体する」。
この項の骨子
@ 多国籍企業という新たな資本も、資本形態からすれば株式資本形態であり、その資本蓄積構造は金融資本的蓄積様式である。
A 今日の金融資本は、管理通貨制度下の変動為替相場制(金という裏打ちがないため実体経済を遙かに越えた膨大な通貨−ドルが氾濫している状態)と国際金融のグローバルな自由化という世界通貨的条件の下で、直接的に世界大の巨大な銀行資本・産業資本・流通資本として現れている。
B 世界体制としては、アメリカ合衆国をヘゲモニー国家とする「パクス・アメリカーナ」体制である。
世界帝国の形成
Y.初学者のための用語集(広辞苑等々を参照に)
@ 「国家独占資本主義」
1917年ロシア革命により、資本主義は「全般的危機」(経済的危機ばかりでなく、政治・イデオロギーなど全体制的危機という意味)を迎えたとされる。また、独占資本主義が導き出す恐慌は資本主義の市場メカニズムで自動回復できない。その危機を国家が軍事や公共工事(道路やダム、空港や港湾等々)の名目で需要を創出したり、郵便貯金や年金基金や税金などの公的資金を低金利で独占資本に融資したり、危機的な個別独占の救済のために債権放棄する。また、膨大な紐付きODA(政府開発援助)による独占資本への発注等々、国家の経済への介入により独占利潤を保障する体制を国家独占資本主義と呼ぶ。さらに、「全般的危機」に見られる政治的イデオロギー的危機を踏まえて、労使紛争や学生闘争、反戦平和の闘� ��などへの国家権力の介入が露骨となる。帝国主義段階の矛盾の進行の中で、独占資本主義から国家独占資本主義へ移行したとされてきた。
A 国民国家
主として国民の単位にまとめられた民族を基礎として、近代、特に18〜19世紀のヨーロッパに典型的に成立した統一国家。市民革命を経て国民的一体性の自覚の上に完成。民族国家。
この項の骨子
@ 帝国主義の基盤となった国民国家を超える規模の通貨・情報・核(RMA)を独占するアメリカ合衆国の<世界帝国>性が明らかになってきた。そのイデオロギーはネオ・リベラリズム(新自由主義)、ネオ・ナショナリズム。
A 世界体制としての世界帝国に対して、本来的な世界的対抗主体である「プロレタリアアート」「マルチチュード」の形成が必然化される。
戦後の革命と反革命
Z.初学者のための用語集(広辞苑等々を参照に)
なぜほとんどのヨーロッパ人は、ネイティブのアメリカ人があると考えられますか?
@ 澎湃(ほうはい)
水のみなぎりさかまくさま。転じて、物事が盛んな勢いで起こるさま。
A ポスト・コロニアリズム
直訳的には「植民地主義以降」「ポスト植民地主義」ということになるが、問題意識としては過去の植民地主義を問うだけではなく、現在までの影響や新たな形態での新植民地主義をも問う。象徴的には1492年のコロンブス「新大陸到着」から西洋による植民地主義が始まる。これは第2次世界大戦まで続き、戦後及び50年代から90年まで、欧米列強からアジア・アフリカの植民地が相次いで独立した。しかし、冷戦が終結し、単一市場世界になった90年代以降も新たな植民地主義が進行している。つまり、ポスト・コロニアリズムは植民地の創始と拡張、植民地の独立、新植民地主義(政治的支配を介さない経済支配による新たな搾取形態)の世界的浸透という問題意識をもつ考え方である。代表的思想家として、フラン� ��・ファノン、エドワード・サイード、ガヤトリ・スピヴァクなどが有名。
この項の骨子
@ 第2次世界大戦後の世界を規定したものは、アメリカ合衆国を盟主とした欧州・日本などの「北」による世界支配体制であった。
A 戦後世界のもう一つの規定力は、「北」による世界支配体制を突き動かしていった、全世界の民族独立革命の大潮流であった。
B 「北」による世界支配体制は、全世界的な民族独立を承認しつつ、これら新興独立諸国をIMFや世界銀行の融資形態や各国の経済・軍事支援という形態で抱摂し、革命の発展を圧殺する国際反革命体制でもあった。
もう一つの「社会帝国主義」的構造
ア.初学者のための用語集(広辞苑等々を参照に)
@ 社会帝国主義
社会主義を標榜しながら、政治・経済・軍事などの面で、他国の犠牲において自国の利益や領土を拡大しようとする帝国主義的政策や考えを押しつけるソ連などの体制への批判の言葉。
A ワルシャワ条約機構
ナトー(NATO)に対抗して1955年、ソ連・ポーランド・チェコスロバキア・東ドイツ・ハンガリー・ブルガリア・ルーマニア ・アルバニアの8ヵ国が加盟して発足した東欧諸国の相互安全保障機構。ワルシャワ条約軍のチェコ侵攻後、68年アルバニア脱退。91年解体。
B ノーメンクラトウラ/ノーメンクラツ−ラ
(ロシア語nomenklaturaで本来は党機関が持つ任命職一覧表のこと)社会主義国で、共産党幹部や上級官僚などの特権階級。
この項の骨子
@ 第2次世界大戦後の世界支配をめぐって、アメリカ合衆国など(西)と旧ソ連を主柱とした社会帝国主義体制(東)との東西冷戦構造が形成された。
A ソ連圏では、ソ連の共産党・ノーメンクラツーラが軍事力を背景にしたワルシャワ条約機構の下に東欧諸国を統制下に置き、自国や周辺国家の労働者や諸民族を支配し抑圧した。
1968年「世界反乱」と挫折
この項の骨子
@ 1968年「世界反乱」は新たな「世界革命」への潮流であった。
A この挫折と中華人民共和国の変質が、「南」「北」の社会主義革命を展望する民衆に大きな困難をもたらした。
89〜91年の世界史的転回とアメリカ一極の世界支配体制
イ.初学者のための用語集(広辞苑等々を参照に)
@ ニュー・エコノミー
90年代に入ってITが急速に進歩し、その活用によるアメリカ経済の変化による新しい経済現象を指す。インターネット、電子メールの普及により、開発・生産・販売・在庫管理の様々なプロセスが効率化され生産性がアップ。個人や企業が国境の枠を超えて取引を行う機会が拡大し、新しいビジネスチャンスも増大。株価の高騰やITバブルも生まれた。クリントン大統領時代の90年代、経済的繁栄が永遠に続くと宣伝された。
A ウォー・エコノミー
ブッシュ(ジュニア)大統領がとる戦争による経済建て直し政策。ITバブルの崩壊などの苦境を膨大な軍事予算の突出と、実際にアフガン・イラクへの戦争を仕掛け、兵器の在庫一掃と新たな生産を行い、軍需産業や関連業界を潤し、また、戦争による石油危機などでメジャーの大儲けを進める。経済の活性化を含んだ戦争政策。
B PKO
Peace−Keeping Orerationの略。国連平和維持活動。国連が、受入国の同意を得て、加盟国の提供する部隊・人員を現地に派遣すること。紛争の防止、停戦の監視、治安維持、選挙監視などを活動内容とする。
この項の骨子
@ ソ連崩壊、社会主義諸国体制の瓦解と東西冷戦体制の崩壊は世界史的転回点。
A 「勝利した」アメリカによる「世界帝国」化とアメリカ一極のグローバリゼーションの急展開。経済的のみならず、政治的軍事的文化的な一極的世界支配は格差の拡大や「南」への抑圧を強めた。「9・11」の背景となる。
「戦争と革命の20世紀」は終わった
イ.初学者のための用語集(広辞苑等々を参照に)
@ 社会進化論
一定の方向に向かって社会が歴史的必然的に変化・発達すること。ダーウィンの生物進化論をスペンサーが社会に応用した理論。この流れで、より帝国主義イデオロギーとしては社会ダーウィニズムがある。生物界における生存競争・適者生存の原理を人間社会に適用し、社会には闘争と優勝劣敗の原理が支配するとする思想。ヘッケルや加藤弘之が提唱。
A 福祉国家
なぜwashingtond.cです。
完全雇用と社会保険政策によって全国民の最低生活の保障と物的福祉の増大とをはかることを目的とした国家体制。ヨーロッパの社会民主主義政策の根幹をなす。イギリス労働党(ゆりかごから墓場まで)やドイツ・スウェーデンなどの社民党は政権党でもある。
この項の骨子
@ 国民国家を梃子とした世界の近代化も20世紀社会主義も、結果として、資本主義と国家の本質的限界のなかでの近代化過程として、歴史的臨界点に達した。
A 新たな21世紀のポスト近代は、まずは「世界帝国」としてのアメリカによる軍事支配・戦争政策とグローバリゼーションであり、そのリアクションとしての「9・11」があった。
(二)「9・11事件」以後のアメリカ帝国の戦争テロルの発動
「9・11事件」の意味
この項の骨子
@ 「世界帝国」アメリカを脅かし対抗しうる国家や体制がなくなり、世界支配の完成の極点に立ったその時に、解体を象徴する事件が「9・11」である。
A 「9・11」とその後の展開は、ソ連崩壊に続く世界史的転回点であることを意味している。
「人類の敵」となったアメリカ世界帝国
ウ.初学者のための用語集(広辞苑等々を参照に)
@ 「大航海時代」
15世紀から17世紀前半にかけて、ヨーロッパ人が新航路・新大陸を「発見」し、活発な植民活動が諸国に起こって、西欧の政治・経済に重大な影響をもたらした時代。
A コロンブス
1492年10月12日はコロンブスによる「新大陸上陸」を記念して、中南米諸国の多くは祝日としている。しかし、ベネズエラのチャベス大統領は02年、この日を「インディオの抵抗の日」と命名、スペインなどの侵略に抵抗した先住民指導者を讃える記念日とした。04年10月12日には、大統領支持派によって、広場にあるコロンブス像を「帝国主義者による大量虐殺」の罪で「死刑」宣告し、銅像の首にロープを巻き付け引き倒した。尚、ベネズエラは世界第4位の石油産出国であり、米国の石油輸入国第3位の国(サウジアラビア・メキシコ・ベネズエラ)。チャベスは98年選挙で富の公平な分配を掲げ、貧困層からの圧倒的な支持で大統領となった。石油国営化などの改革を断行。それ以降、米国や国内財界・親� ��派などの巻き返しを含め、激しい闘いを続けている。
B アル・カイダ
アラビア語で「基地」の意味。オサマ・ビンラディンが指導する国際テロネットワーク。ビンラディンは1957年、サウジアラビアのリヤド出生。父親はサウジの王族に取り入って成功した建設業者(70年死亡。ビンラディンは3億ドルの遺産を相続したといわれている)。1979年のソ連のアフガニスタン侵攻に対し、反ソゲリラに参加。ゲリラはCIAから資金や武器の援助、訓練も受けた。1989年、ソ連軍が撤退すると、ビンラディンもサウジに帰国したが、1990年、イラクのクウェート侵攻を機に、サウジにアメリカ軍が駐留することになった。異教徒の軍隊を容認しないビンラディンはサウジ王家を批判し、サウジを追放された。そしてアフガンに留まった。
この項の骨子
@ アメリカは近代西欧文明の理念を体現した人造国家である。しかし、出発から先住民の土地を奪い、他国を侵略し領土を拡大していった。その発展期には近代奴隷制としてアフリカから黒人を奴隷として「買い入れ」てきた。自由・平等・独立・民主主義・人権などの理念を掲げながら、実態の侵略・虐殺・差別が「文明的野蛮」の意味するところである。
A 「世界帝国」アメリカの実態としての「文明的野蛮」に対し、全世界の民衆がアメリカを共通の敵として闘わざるを得なくなってきた。
イスラームの台頭とその文明的意味
エ.初学者のための用語集(広辞苑等々を参照に)
@ アーバニズム
urbanism。都市を志向する社会的文化的な傾向。また、都市に特徴的な生活様式。アメリカの社会学者ワースの概念が代表的。
この項の骨子
@ イスラム文明は、7世紀以降の世界文明であった。文明の周辺であった西欧が世界文明として登場する近代及び現代において、「9・11」に象徴される事件の背景が、周辺におかれたイスラムとの「文明の衝突」であるかの装いを見せている。しかし、問われているのは、全世界の多民族・多文化の平和的共存をめざす新たな文明への根本的転換である。
A 現代世界の問題は、地球的危機が現代資本主義の根本矛盾の発現であるにも関わらず、現代資本主義に代わる新たなオルタナティブ(新コミュニズム)・新たな主体形成ができていないことである。このことが、アメリカとイスラムの対立という形態を取らせている。
アメリカ帝国の「21世紀型戦争」と世界秩序の再編成
この項の骨子
@ 9・11以降の現代世界史を規定するのは、世界帝国アメリカの「21世紀型戦争」の基本動向である。
A 「21世紀型戦争」はかっての帝国主義間体制間戦争とは異なり、「グローバリゼーションとアメリカニズム」の根本矛盾に発する周辺諸国・民衆を対象とした「戦争」である。
東アジアが世界的危機の舞台に
1.欧州
2.ロシアと中国
3.中東・パレスチナ問題の歴史的性格と構造
4.朝鮮半島における戦後冷戦構造の崩壊と新たな激動の始まり
オ.初学者のための用語集(広辞苑等々を参照に)
@ バルト海都市地中海アーチ
zembra滝分
バルト海はヨーロッパ大陸とスカンジナビア半島との間の海域。バルト海を挟んで、国民国家を越えて「バルト海都市連合」という地域連携が進んでおり、地域活性をはかっている。同様に、地中海に橋をかけるという表現を使って、北イタリア・南フランス・スペインのバルセロナの地域などが国境を越えた地域連携を成功させている。
A グルジア
1918年グルジア独立。22年アルメニア・アゼルバイジャンと共にザカフカス・ソビエト社会主義連邦共和国を形成、ソビエト連邦に加盟。36年スターリン憲法により独立した連邦構成共和国となる。91年ソビエト連邦解体により独立。92年シュワルナゼ(元ソ連外相)が国家評議会議長就任。95年同大統領。03年大統領選挙の不正疑惑でシュワルナゼ大統領が辞任に追い込まれた。04年再選挙で野党「国民連合」のサアカシュヴィリが圧勝、引き続いた議会再選挙でも国民連合が圧勝した。
B チェチェン
ソ連崩壊直前の1991年11月、ソ連の中のチェチェン共和国でドゥダーエフが大統領に選出、ソ連からの独立を宣言。ソ連崩壊後のロシア連邦(エリツィン)は独立を認めず、国内問題として処理しようとした。94年ロシア軍侵攻。激しい攻防が続くが96年ドゥダーエフが戦死、停戦。しかし、99年、独立を求める武装勢力の活動再開により、再びロシア軍が攻撃。2000年プーチンが大統領になり、チェチェンをロシア連邦の直轄統治にする強硬手段に出たため、より激しい戦闘が続く。チェチェンには、カスピ海からロシアへ石油を送るパイプが通っている。
C ウイグル
中国北西部にあり、カザフスタン・キリギス・タジキスタンなど8つの国境に接する。新疆(しんきょう)ウイグル自治区。新疆は中国語で「新天地」という意味。トルコ系イスラム教徒のウイグル族が多数を占めていた地域で日本の面積の4.5倍。人口は1700万人。しかし最近、中国政府の方針で漢民族の移住が進み、漢民族が過半数を越え多数派。中国成立以前に「東トルキスタン共和国」が一時的に存在した歴史があり、また、漢民族移住強行に強い反発もあり、イスラム教徒の中で独立運動が展開されている。この運動は中央アジアのイスラム教の国から支援を受けている。
この項の骨子
@ ユーラシア大陸(西の端の西欧と東の端の朝鮮半島まで)のこの20年の動向が世界を規定する。それはアメリカの世界支配の没落過程と重なる。
A 欧州はヨーロッパ連合(EU)の質量の拡大深化で、国民国家の枠を越えた統合をめざす。これは、ユーロによる統一通貨(機軸通貨の志向)やEU憲法・軍 の創設を目指して、アメリカ支配と相対的距離をとる。イラク政策の距離感。
B 「社会主義市場経済」の中国共産党独裁は、資本主義の復活の中で、ブルジョア独裁に転化している。9%高度経済成長の13億の巨大消費と世界の工場は、現代資本主義の矛盾に直面してくる。
C 「中東」争乱の源はパレスチナ問題である。石油の利権争奪とユダヤ人大虐殺に責任と解決を求められた欧米列強が、パレスチナに住むアラブ人住民に犠牲を押し付けた「イスラエル」建国こそに発祥がある。アメリカのイラク戦争の拡大が「中東戦争」に発展する可能性もある。
D 米日による北朝鮮敵視政策の一方で、朝鮮半島の南北の自主的平和統一の流れが本流としてある。この流れを押し止めているのが、アメリカの東アジア安保戦略であり、結果的には北朝鮮の独裁体制である。
北東アジアは世界的激動の入口に立っている
この項の骨子
@ 世界的危機が現実化する中心舞台としての東アジア。朝鮮半島や台湾の今後が中国の在り方にも連動し、アメリカに甚大な影響をもたらす。世界への連動性。
A アメリカの世界支配の破綻の中で、米日安保体制も動揺する。
B アメリカに代わる世界的機軸国の登場ではなく、欧州・中国による多極化する世界が現出する。
(三)新しい波、新しい挑戦
資本主義は倒さなければ倒れない
この項の骨子
@ 倒す主体が現れなければ、人類は資本主義と共に滅びる。
A 既成新旧左翼は低迷か消滅。むしろ、グローバルな世界単一市場化、世界帝国化に即応する新たな運動形態と課題を担う世界的な民衆運動の潮流がその基盤を広げている。68年世界革命やフランス革命の理念を新たな水準で継承している
グローバリゼーションと貧しき民衆のせめぎ合いの時代
カ.初学者のための用語集(広辞苑等々を参照に)
@ トランスナショナル
和訳として国家(民族)を超えた、多国籍の、多国籍企業
この項の骨子
@ 反ネオリベラリズム・グローバリズムを鮮明にした(貧困・飢餓・不平等・環境破壊・人権侵害を生み出すものへの強烈なノーの意志)、この間の先進国首脳会議やWTOへの世界的な民衆的包囲網、世界社会フォーラムへの大結集は、世界各地の反米・反戦の大衆的行動と結合しだした。
「もう一つの世界」を求めて
カ.初学者のための用語集(広辞苑等々を参照に)
@ 「密林宣言」
前出サパティスタ民族解放軍(EZLN)からの宣言。1993年12月から数本の宣言がある。
A アタック・アソシエーション
ATTACは「市民を支援するために金融取引への課税を求めるアソシエーション//Association for theTaxation of financial Transactionns for the Aid of Citizens」の略。1997年のアジア通貨危機を受けて、投機的通貨取引を抑えるためのトービン税導入をめざし、フランスで結成された研究・学習活動団体。現在フランスの会員は3万人を越え、日本も含め世界40ヵ国で同様の団体が組織されている。トービン税ばかりでなく、新自由主義的グローバル化に伴う様々な課題を扱う。
B モンドラゴン協同組合
スペイン北部のバスク地方の3つの県が「バスク自治政府」に構成されている。その内のギプスコア県にモンドラゴンという名の町がある。1941年、ホセ・マリア・アリスメンディアリエタ神父がモンドラゴンのカトリック協会に着任した。43年には技術専門学校を開校。教え子が1956年、灯油ストーブ製造の工業協同組合を創立。以降次々と工業協同組合を作る一方、神父の指導で信用協同組合(労働人民金庫)、社会保障協同組合、生活協同組合、初等から修士レベルの学校を多数作る。労働者が協同組合に出資する労働者協同組合(ワーカーズ・コレクティブ)形式をとる。6000億円を超える売上、資産1兆4000億円、従業員3万人。
C ルーカス・プラン
イギリスの労働組合運動は、職場委員制(ショップ・シュワード)を土台に産業民主主義制度(団体交渉を企業の意思決定の場にする)を強める取組を行った。ルーカス・エアロスペイス社は70年から75年にかけて17,000人の従業員の内5,000人が失業した。労使の対立が激化する中で、ルーカス社の職場委員達の手で、オルターナティブな経営・生産方針(ルーカス・プラン)が作られた。企業再建の道筋を、第1に、将来、航空宇宙産業に復帰した場合にも労働者が従事できるような一連のオルターナティブ的製品を生産すること。第2に、このオルターナティブな製品の中には、広く地域社会で社会的有用性を認められているものが多くなるよう留意することとした。単に反対だけするのではなく、労働者自らが� ��営すると共に、自らの労働を利潤をあげるためなら何でもかまわないではなく、社会的有用性をめざすという価値観を明らかにした。
D LETS
Local Exchange Traiding System。直訳すると地域交換取引制度となるが、1983年カナダのマイケル・リントンが始めた地域通貨の事である。地域通貨の歴史は古く、有名なのは1832年ロンドンでロバート・オーウェンが実施した労働証券。財を生産する平均的労働時間を表示する労働証券を媒介に生産物が取引されたが、労働時間算定や商人の投機的介入で失敗した。1930年代にもドイツ・オーストリア・アメリカでかなり広く実践された。いずれも国家による貨幣管理や経済統制で潰された。90年代以降再び活性化しており(グローバリゼーションへの対抗)、世界で3000以上の種類があると言われている。地域通貨は、経済的に見れば、地域経済の活性化、循環型経済の確立� ��信用創造と資本蓄積の阻止を目的とするが、倫理的には、互酬的な交換を通じ、相互扶助的で共同的な関係や倫理を再建するという目的を持つ。
E オランダ型モデル
フルタイム労働とパートタイム労働の差別をなくして、夫婦で「1.5人」型の働き型というモデル。ワークシェアリングを実質的に押し進める。1982年労働組合と経営者団体と政府とが合意(ワッセナー合意)。@賃上げを抑え、労働時間短縮を徹底し、失業者へワークシェアリングした。A男性優位の雇用・労働システムの変化。自由時間の増大で地域社会への関与を深めた。Bパート労働の賃金や社会保障をフルタイムと同様の権利として保障した。Cパーセンテージ労働(労働時間分割。フルやハーフや短時間の選択)への流入が男女共に増えた。就業機会の増大と0.75+0.75=1.5のペアワークが大量に現れた。D賃金が支払われる労働と賃金が支払われない労働(例えば、家事労働・育児など)双方での男女の対� �な役割分担が進み「ジェンダー平等」への社会的条件作りの道筋が具体化してきた。
この項の骨子
@ 全世界的に「もう一つの世界」を求める主体の登場と多種多様な挑戦が始まっている。
A 資本のグローバリゼーションに対し、民衆の側のオルタ・グローバリゼーションは「双方向的相互的コミュニケーションと参加者が自己決定し行動するスタイ ル」で、大衆的創造性を発揮し開花させている。
人類共滅への道か、新たなる革命か
この項の骨子
@ 目前の問題の真の解決は、全世界の生産者・民衆の現代資本主義の打倒・廃絶をめざす全く新しい自律的・自立的な観点に立つ、トータルな社会・政治・文化革命に行き着かざるをえない。
A 革命と革命主体の再生が急務の課題。
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