2012年4月8日日曜日

医学書院/書籍・電子メディア/APA論文作成マニュアル


まえがき(Gary R. VandenBos)/はじめに(Mary Lynn Skutley / Gary R. VandenBos)/

まえがき
 アメリカ心理学会(American Psychological Association,以下APA)が発行する学術論文作成マニュアルは,1929年にある学術誌に掲載された短い報告記事に始まる。それから今日まで本書『APA 論文作成マニュアル』(Publication Manual of the American Psychological Association )は一貫した態度で,研究成果を学術誌に発表する際に必要な,妥当かつ厳格な基準を定め,学術研究推進の一端を担ってきた。
 この1929年の報告記事では,国立学術研究会議(National Research Council)の後援で参集した心理学・人類学の専門家,および学術誌の編集担当者らによって,学術論文の執筆に必要な手引き,すなわち,読み手が理解しやすい論文を書くための注意すべき点を簡潔にまとめたガイドラインが示された。それ以来,新たな学問的発見や科学的知見がより多くの研究者の間で共有されることをめざして,この論文スタイルについてのガイドラインを改定し拡充する努力は,心理学のみならず,社会科学,行動科学の研究者にも受け継がれてきた。
 論文スタイルを統一することにより,たとえば,数ある論文のなかから研究に必要なテーマや発見に関連する論文を短時間で選べることや,枝葉末節の部分に悩まされることなく真に大切な情報を過不足なく示すことができるなど,さまざまな効果が期待できる。また,量的分析の結果から重要な点を明らかにしたり,分析結果の提示にもっとも適した種類の図を選び出す場合にも有効であり,研究手法を詳細に検討した内容の報告や,研究参加者1人ひとりについての正確かつ偏見のない記述の際にも役に立つ。さらに,参考文献を記載する際の正しい句読点の打ち方や,文中での数字の正確な使い方などにも迷うことがなくなる。このような点は「ルール」として明示され,それに従うことで明晰な文章表現が可能となり,その結� ��,執筆者は論文の形式面よりも内容面に知的なエネルギーを集中することができるようになる。
 今日,APAが発行する学術誌,書籍,そして電子データベースは,すべてAPA方式の論文スタイルが定めるルールに準拠している。私がAPAの出版部門の代表を務める間に,APA発行の学術誌の総ページ数は年間17,700ページから37,000ページへと大幅に増え,APA発行の書籍も12冊から1,214冊を超えるまでに成長した。また,160巻からなる心理療法の訓練用ビデオも出されている。1つだった電子データベースも5つに増え,アブストラクト,書籍,学術誌,レビュー,さらに,公的機関の報告書といった非売品の文献までも即座に検索することが可能になった。こういった大量の学術情報は本書に示された論文スタイルのルールに従っており,本書は『APA心理学辞典』(APA Dictionary of Psychology ),『心理学百科事典』(Encyclopedia of Psychology )とともに心理学の発展に重要な役割を果たしている。
 そして,本書は心理学の専門家だけでなく,教育学,社会福祉学,看護学,経営学,そして,行動科学,社会科学の諸分野を専攻する多くの学生や研究者に広く使用されており,また,本書に示された論文作成の基準は,英語のみならず,スペイン語,ポルトガル語,韓国語,中国語などの多くの言語にも適用されている。今回の改訂で中心となった検討課題は,インターネットをはじめとするさまざまな技術革新に,学術研究がどのように影響されてきたかという点であった。すなわち,テクノロジーの進歩による,研究の構想,研究の実施,そして研究成果の利用方法などの変わりようである。その変化を明らかにし,論文スタイルのルールに組み込んでいくことが,今回の改訂の主要な目的である。APA発行の他のレファレンス� �ともに,学術論文を作成する際に本書がお役に立つことを願う次第である。
 
 Gary R. VandenBos, PhD
 Publisher, American Psychological Association


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はじめに
 学術研究の成果を発表する方法は複雑に変化してきている。この変化を正確に把握し,今回の改訂に反映させるために,多くの専門家,および専門職団体の協力を得ることができた。2006年に始まった本書の改訂作業では,まず,前版(第5版,2001年発行)の内容を詳細にチェックし,前版の出版から5年以上にわたって蓄積されてきた読者の反応,意見,評価などを精査した。また,前版に寄せられた書評の内容を検討し,さらに,心理学,教育学,看護学,歴史学,経営学関連の学術誌の編集長に前版の批評をお願いした。そこから得られた意見や批判を徹底的に分析し議論した上で,APA出版委員会は本書の改訂に必要な基本方針を定めた。そして,経験豊かな編集者とさまざまな専門分野の学識経験者からなる編集委員会が組織さ� ��,専任スタッフとともに改訂作業にあたった。2007年2月,6人からなる『APA論文作成マニュアル』改訂チームのメンバーによる最初の会合がもたれ,主として,倫理,学術論文報告基準,偏見のない文章表現,画像,文体,引用文献,統計の7領域で加筆,および改訂が必要であることが確認された。その結果,各領域の専門家からなるワーキンググループが結成され,それぞれの領域で改訂チームを支援する体制がとられた。
 改訂作業が進むなか,編集スタッフは,APA編集評議会に参集したAPA発行の学術誌の編集長,学術会議に出席したAPAの会員,APAの各種委員会メンバーなど,さまざまな場でさまざまな人に改訂への意見や助言を求めた。また,APAウェブサイト(www.apastyle.org)には,『APA論文作成マニュアル』の利用者からその内容に関する意見が直接寄せられた。そのような方法で集められた意見,および要望は,ワーキンググループや改訂チームのメンバーに報告され,検討が加えられた。このように,今回の改訂版は,多くの専門職団体や専門家との創造的な共同作業の産物であり,関係者,およびご協力をいただいた方々に厚くお礼を申し上げる次第である。
 まず,『APA論文作成マニュアル』改訂チームのメンバーに感謝の意を表したい。各メンバーは,多くの時間をかけて,前版に寄せられた批評を徹底的に分析し,また,今日の学術出版を取り巻く状況を検討することで,今回の改訂で詳細に取り上げるべきテーマを特定した。さらに,ワーキンググループのメンバーと会合を繰り返し,原稿の作成と校正を行ない,各稿の内容を繰り返しチェックした上で,その修正箇所を納得いくまで討議し,そして責任をもって最終稿の確認を行なった。今回のプロジェクトで,改訂チームのメンバーによる熱心かつ多大なる支援から多くの恩恵を受けたことは大いなる幸運であった。
 同じく,本改訂版の完成に大きな貢献をされたワーキンググループのメンバーにも感謝したい。各メンバーは,インターネット会議に煩をいとわず参加し,それぞれの専門分野に関する内容が正確かつ包括的に記述されるように努力を惜しまなかった。この専門家メンバーの機知,ユーモア,そして洞察からも多くの恩恵を受けたことをここに記しておく。
 改訂作業が始まって間もないころ,本書の主な利用者である心理学,看護学,教育学,経営学の学術誌の編集責任者,および執筆者に前版の批評をお願いした。そこから寄せられた助言は本改訂版のなかで十分に活かされている。有益なご意見やご提案をいただいたことについて,Barney Beins, Geoff Cumming, Janet Shibley Hyde, Judy Nemes, Kathryn Riley, Henry Roediger III, Peter W. Schroth, Martha Storandt, Sandra P.

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Thomasの諸氏に感謝したい。また,学術資料の閲覧,保存,検索の方法を大きく変えつつある技術革新について,Linda Beebe,およびPsycINFOのスタッフからいただいたご教示はたいへん貴重なものであった。
 本書の目的は学術論文の執筆要領を示すことであり,それは誰もが納得する理にかなったもので,また時代に合った最新のものでなくてはならない。そこで適切な指導を得るために,次のAPAの各種委員会にもコメントをお願いした。APA Committee on Ethnic Minority Affairs(少数民族問題),APA Board of Scientific Affairs(科学としての心理学全般),APA History Oversight Committee(心理学の歴史),APA Committee on Disability Issues in Psychology(心理学における障害の問題),American Psychological Association of Graduate Students(大学院生関連事項),APA Task Force on Gender Identity, Gender Variance, and Intersex Conditions(性自認,性の多様性,インターセックス),APA Committee on Socioeconomics Status(社会経済情勢)の各委員会からいただいたご提言に感謝する。
 教育の現場で論文指導をされている教員の方々には,教室で実際に本書を学生とともに使用する立場から本書の改良すべき点についての貴重なご意見をいただいた。特に,Dee Seligman, Wendy Packman, Scott Hines, Geeta Patangay, Mylea Charvat, Jeff Zuckermanの諸氏に感謝したい。
 最後に,APAの出版部門とデータベース管理部門のスタッフ(Paige Jackson, Susan Herman, Annie Hill, Harriet Kaplan, Edward Porter, Shenyun Wu, Amy Pearson, Ron Teeter, Hal Warren, Beverly Jamison, Susan Harris, Julia Frank-McNeil)による本書への多大な貢献に感謝する。また,Nora Kisch, Julianne Rovesti, Peter Gaviornoをはじめとする販売部門のスタッフは,改訂新版の情報を広く社会科学領域の人々にまで提供すべく献身的に取り組まれたこともここに記しておく。Jennifer Macomberには原稿の段階から出版に至るまでたいへんお世話になったが,氏の編集に対する経験豊かで,細部までゆるがせにしない態度には特に敬意を表したい。末尾ではあるが,今回の改訂において中心的役割を見事に果たし,その作業を円滑に,そして常に快活に進められたAnne Woodworth Gasqueに心から感謝の言葉を述べる次第である。

 Mary Lynn Skutley
 Editorial Director, APA Books

 Gary R. VandenBos, PhD
 Publisher, American Psychological Association


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 『APA論文作成マニュアル』が初めて活字になって出版されたのは1929年のことであった。その当時のマニュアルは「基準となる執筆手順,つまり,例外事項を認めつつも文体,書式で迷った時に参照できる手順」(Bentley et al., 1929, p. 57)を示した7ページの短い記事に過ぎなかった。それから80年後,『APA論文作成マニュアル』第6版を上梓することができたが,内容に関する基本的な方針は変わっていない。しかし,この80年の間に『APA論文作成マニュアル』は大きく発展したことも事実である。その変化は必然的なものであり,単に文体上のルールを示すものから学術論文の執筆,編集,出版全般にわたる権威ある手引書へと成長し,現在では,学術論文の出版に関する倫理上の問題から偏見のない文章表現までの幅広いテーマを扱っている。
 「APAスタイル」と呼ばれるルールは,これまでの膨大な数の心理学関係の論文をベースにして,学術論文の作成に十分な経験を有する編集者や著者,そして出版実務の第一人者とされる識者により集成されたものである。今回の改訂は,出版に関する新たな基準や,情報発信についての最新の手法も反映した新しい内容となっている。前版(第5版)が出版されてから今日まで,学術出版を取り巻く環境は大きく変化している。技術革新により,これまで以上に高度な研究が可能となり,また,ブログや個人のウェブサイトからオンラインデータベースまで,研究の成果もさまざまな方法で発表されるようになってきた。その結果,研究成果の利用手段も「論文を読むこと」から「コンテンツを消費すること」へと変わってきたのであ� ��。
 こういった技術革新をはじめとするさまざまな進歩が,学術出版に大きな影響を与えている。その影響がどのようなものかを示すために,本書は大幅に改訂され,同時に簡略化された。本書の第一の目的は,読者が簡単に使える論文作成マニュアルを提供することであり,そのために1つのテーマに関連するすべての情報を1か所に集約した。その掲載の順は,論文の構想から執筆,そして出版に至るまでの各段階別になっている。これまでと変わることのない項目で,今回さらに補強された内容は,執筆スタイルに関する基本的なルールと,30年以上も前にAPAが他の学術団体に先駆けて提案した「偏見のない文章表現のためのガイドライン」である。今回の改訂で特筆すべき点は,倫理,統計,学術論文報告基準,電子媒体の参考資料� ��書式,そして図・表の作成に関するページを大幅に増やしたことである。
 さらに,今回の改訂における重要な点は,インターネットで利用できる情報を拡充したことである。インターネットの活用で利用可能な情報量が飛躍的に伸びているが,たとえば,APAウェブサイト(www.apastyle.org)にアクセスすることで,APAスタイルを学ぶために必要なすべての情報が入手でき,また論文執筆や出版に関する新しい情報を得ることができる。このような情報は常に更新されているのでインターネットでの検索をお薦めしたい。


『APA 論文作成マニュアル』第6版の構成と内容
 第1章 学術論文の一般的な種類について説明する。また,出版における倫理の役割について述べ,倫理遵守のための最善のガイドラインを提示する。
 第2章 タイトルから付録まで,学術論文を構成するすべての項目についてそれぞれの機能と形式を中心に説明する。また,最新の学術論文報告基準についてもまとめる。章の後半にAPAスタイルのルールを具体的に示すサンプルペーパーを掲載した。
 第3章 学術論文を計画し執筆する際の基本的なガイドラインを提示する。研究の構想,効果的な表現,記述の正確さ,表現において配慮すべき点について説明する。
 第4章 句読法,綴り,大文字使用,略語,数字,統計記述などの書式についての基本的な注意事項について説明する。学術研究の成果を正確に伝えるために,このような基本事項の書式に一貫性をもたせることは重要である。
 第5章 文中での図,表,グラフ等の効果的な使用法についてデータ提示の具体例を示しながら説明する。
 第6章 引用についてのガイドラインを提示する。参照する先行研究の扱いと引用の方法についての基本ルールを考察したのち,文中での引用の方法と,出典を探すために必要な情報を過不足なく含んだ引用文献リストの作成法について説明する。
 第7章 APAスタイルによる引用文献の記載例を網羅的・包括的に示す。学術誌からポッドキャストまで広範囲にわたる参考資料をカバーするが,特に電子媒体からの引用による資料の記載方法を詳述する。
 第8章 学術論文が発行されるまでの過程を概観する。特に,原稿作成から出版までの各段階における著者の責任について述べる。

今回の改訂の特記事項
[全体の方針について]
 本改訂版の企画段階で,今回の改訂の基本的な方針となる2つの大きな問題が取り上げられた。第一の点は,本書の対象となる利用者の範囲の特定である。本書はもともとAPA発行の学術誌に投稿するための論文執筆マニュアルであったが,これまで,本書は心理学のみならず,広い範囲にわたる学術分野の研究者に利用されてきた。そこで,現在の幅広い利用者層を考慮し,この改訂版はどの程度までAPA発行の学術誌に関連する内容に限定すべきかが議論された。
 APA発行の学術誌に関する詳細な情報はAPAウェブサイト(
 第二の点は,本書がどの程度まで規範的なルールを示すことができるかという問題である。換言すれば,本書は実際に行なわれている手法を記述するだけではなく,どの程度まで「あるべき論」を示す必要があるのかという問題である。第4版の前書きに,この点に関して次のように述べられている。


 本書『APA 論文作成マニュアル』は文体・書式に関して著者が知るべき必須事項をルールとして載せているが,本書の記述内容とは異なった方法やルールが必要な場合があることは認めている。そこで,執筆者が本書のルールを使用する際には,単に盲従するのではなく,そこに書かれている内容をよく考えることが望まれる。学問としての心理学そのものの進歩は極めて速く,心理学の成果を発表する表現形式はそのスピードに追いついてゆかない。したがって,本書は起こりうる文体・書式上のすべての問題に対処できているとは限らないのである。その意味で,本書はあくまでも暫定的な書物だと考えてほしい。つまり,本書が求めている文体・書式上のルールは現行の学術論文に基づいており,そのルールは絶対的なものではなく,今後必要� ��応じて改訂されることも十分にありえる(American Psychological Association, 1994, p.
xxiii)。
 社会科学や行動科学では,論文作成に関して慣例として実際に用いられているさまざまな手順が存在している。そこで,本書では,ルールの内容によって,新しい方向を示す「あるべき論」を展開していく場合と,単に現行のルールを紹介するにとどめる場合とに分けることにした。

[新規の内容,および拡充された内容]
 第1章 学術研究において倫理的問題への配慮は重要である。本書では,研究における倫理の問題を最初の章で取り上げ,考察すべき倫理的配慮の内容の幅を大きく広げた。新たに示したガイドラインは,著者の定義,二重投稿,剽窃および自己剽窃,研究参加者の扱い,器具使用の妥当性,追証のためのデータ利用についてである。
 第2章 ここでは,論文原稿を構成する各項目について必要なすべての情報を記載した。前版ではいくつかの章に分散されていたものをまとめ,各項目別にそれぞれの目的と中心的な内容を記し,また文中での記載法について述べた。この章には新たに学術論文報告基準を加えたが,これは研究成果を明瞭かつ正確に報告する際に役立つチェック項目となるものである。また,統計的手法に関する考察も増やし,効果量の報告についてのガイドラインも含めた。さらに,オンライン補足資料の利用や作成について新たな項目を設けた。最後に,論文原稿のサンプルを載せ,APAスタイルのルールについて実例をあげて説明した。
 第3章 本章では,2つの項目に大幅な修正を加えた。まず,電子出版に対処するために見出しのスタイルを簡略化した。次に,言葉の偏見をなくすためのガイドラインを刷新し,この点に関する最新の動向を反映させ,今日の視点から不適切とみなされる古い表現についての項目を加えた。また,悪文を避けるための文法・語法の具体例は数を増やしてAPAウェブサイトに移した。このサイトを活用することで,執筆者は適切な文章スタイルをチェックでき,また,APA編集部も用例の改訂・更新が簡単にできるようになった。
 第4章 本章の新しい内容は,推測統計を報告する際のガイドラインを加えたことと,統計用語の略号の一覧表を大幅に改訂したことである。大量のデータセットと他の媒体を含むオンライン補足資料の利用についても新たに取り上げている。
 第5章 前版が出版されて以来,図・表・グラフ等の作成手順は大きく変わってきている。本章では,電子媒体によるデータ表示について,それぞれの表示の目的を理解し,調査研究の結果報告に最適の手法の選択に役立つ説明を増やした。電気生理学,イメージング,その他生物学のデータなど,さまざまなデータ表示の実例を新たに加えた。
 第6章 本章では,引用に関する必要なすべての情報を網羅した。まず,引用の分量,掲載方法,引用許諾の取得方法について述べ,文中での引用の表示と引用文献リストの作成について詳述した。電子媒体からの引用に関する内容が大幅に加筆され,信頼できる学術論文検索手段であるDOI(デジタルオブジェクト識別子)にページを割いた。
 第7章 第6章で説明した参考資料の多様化に対応すべく,本章では引用文献の記載例を大幅に増やした。電子媒体に重点を置くことで,データセット,計測装置からソフトウェア,オンラインディスカッションフォーラムまで,オンライン情報源に関する新しい具体例も加えられた。
 第8章 本章では,APA独自の編集方針や出版手順に限定するのではなく,より全般的な視点から学術論文出版の過程に焦点を当てた改訂が施された。特に,査読の役割と過程についての検討事項を増やし,また,出版の倫理的要件,法的要件,そして出版方針に関する要件についての議論を加え,出版に至るまでの出版社との作業に関するガイドラインを示した。

『APA 論文作成マニュアル』の使用法
 本書に掲載されている内容は,学術誌に投稿する目的で論文を執筆する人が参照すべき必須事項である。各章は,それぞれ異なる情報を扱っており,投稿論文の構想から執筆,出版に至るまで,それぞれの段階に応じて対処する必要のある項目を順に配列している。このように,各章は独立した記述形式をとっているが,これから初めて学術論文を発表しようとする人は,まず本書を最初から最後まで通読してほしい。論文の構想から出版に至るまでに必要な手順の全容を理解することは読者にとって有益であると考える。


[『APA 論文作成マニュアル』第6版の構成上の特徴]
 本書では,論文の構想から原稿の提出までの重要事項をチェックするリストを収録している。そのチェックリストは次のとおりである。

   チェックリストの名称:ページ
   倫理的配慮のチェックリスト:14
   表のチェックリスト:161
   図のチェックリスト:179
   原稿提出時のチェックリスト:266

 また,論文原稿のサンプルを載せ,APAスタイルのルールの具体例をあげた。サンプルペーパーは,1つの実験からなる論文の見本(図2.1., pp.38-50),2つの実験からなる論文の見本(図2.2., pp.51-54),メタアナリシス論文の見本(図2.3., pp.55-56)の3本である。



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