風衝地 | マルハナバチと植物の関係 | 異型花柱性 | 雌雄異熟性
風衝地(ふうしょうち)
高山植物の生育場所は、おおまかに「風衝地」と「雪田」に分けられます。風衝地は山頂や稜線付近など、強風のために冬季の雪が吹き飛ばされて積雪のない場所です。冬の気温は氷点下20℃を下回ることもしばしばあります。風衝地では冬に土壌が凍結し、著しい低温にさらされる苛酷な環境です。植物は春早くから成長を始めることができますが、霜害の危険を伴います。 一方、冬の風下にあたる南東向き斜面や窪(くぼ)地には大量の雪が積もります。約50cm 以上の雪が積もると、断熱効果のために土壌の凍結は起きません。雪によって低温から保護されるのです(かまくらの中が暖かいと感じるのと一緒)。こうした場所が雪田になります。植物は積雪期には保護されますが、雪解けが遅いために生育期間がとても短く、急いで繁殖しないといけません。 高山植物は、このような寒冷環境か生育期間の制約かという選択肢の中で、それぞれの環境に適応しているのです。高山帯では、風衝地と雪田がモザイク状に分布しています。 なぜcalendersは文化に切り抜いたです。 | |
マルハナバチと植物の関係
図:エゾノツガザクラを訪花するマルハナバチ(左)と、チングルマを訪花するアブ(右)。ともに花粉媒介昆虫。
花を咲かせる植物にとって、動物に花粉を運んでもらうのは、非常に大事なことです。
マルハナバチ、ハエ、アブ、チョウ、いろいろいますが、中でもマルハナバチはかしこい、効率的な餌の求め方をします。動物にとっては、蜜や、食べるための花粉などが餌になります。
マルハナバチは学習能力があり、餌を豊富にとれる対象植物を見つけると、その後集中的にその種の花のみを訪花する傾向にあります。一方他の動物たちは、とにかくランダムにいろんな植物を訪れます。
植物にとって、大切な花粉(動物でいったら、精子ですよ!)を運んでもらうのは重要なことで、訪花した昆虫の体表に付着した花粉を、確実に他の同種個体の「めしべ」へ渡してもらいたいわけです。マルハナバチ以外の昆虫だと、ふらふらといろんな植物を移動しているうちに、体に付着した花粉がどんどん落ちていってしまうのです。もしマルハナバチが種Aを訪花したあと、すぐに他の種Aにまた訪花してくれれば、たくさんの花粉がめしべに到達するわけです。
このため、マルハナバチを花粉媒介に利用している植物たちは、いかにマルハナバチを惹きつけるか、そのためにどんな花を咲かせたらいいのか、さまざまな工夫をこらして進化してきました。
異型花柱性
誰が、何を、どこで、テスト、および方法
図1:エゾコザクラの花を真上から覗いた写真。めしべが長くおしべが短い花(左)をもつ個体と、めしべが短くおしべが長い花(右)をもつ個体があります。
図1をみて分かるように、エゾコザクラには、めしべが長くおしべが短い花(長花柱花)と、その逆の短花柱花の2タイプがあります。上から覗き込んだ写真だと分かりにくいので、下の図2を見てみましょう。Pのめしべの長さとTのおしべの長さ、Pのおしべの長さとTのめしべの長さは大体一致します。マルハナバチは、図の絵よりも、もう少し大きく、花にもぐり込むことはできないと思ってください。そして、マルハナバチは花の奥のほうにある蜜を、長い口吻をのばして吸います。Pの花にとまって蜜を吸った場合を考えましょう。まっすぐに口吻をのばして、めしべの付け根にある蜜を吸う際、マルハナバチの口吻の特定の位置にPの花粉がつきます。そして、次にTの蜜を吸うとき、口吻をのばすと、Tのめしべに花粉が付くだ� ��うということが想像できると思います。
植物にとって一般的に、自分の花粉が自分のめしべに付着することは好ましい状況ではありません。他の花粉を運んできてもらおうと(あるいは自分の花粉を他に運んでもらおうと)、目立つ花で必死にアピールしているのですが、植物側の努力はそれだけではないのです。異型花柱性(花柱…めしべ、のタイプが数種類見られるということ)の場合、図2のように花内部の構造を工夫することによって、より多くの他個体の花粉を得ることができるのです。
コホート研究とは何か
マルハナバチだけでなく、特定の動物にひじょうに依存している例は多く存在します。それでは、特定の動物がいなくなってしまったら、どうなるでしょう。植物は重大な影響を受けることが想像できます。植物だけでなく、動物も大事だし、その環境全体がきちんと残されていくことが大事だということが分かります。
図2:長花柱花(P)、短花柱花(T)と、花粉の流れを示す。
雌雄異熟性
一般的な花には、一つの花におしべとめしべが同居しています。おしべ=オス、めしべ=メス と考えてください。花粉生産するのって、何のためか分かりますか?遠くの個体に花粉を運んでもらって、遠くの花のめしべに到達するためです。そして、親の組み合わせによって、多様な遺伝子の組み合わせが生じ、多様性が生まれる。
ところが、自分の花粉が自分のめしべについてしまったら、どうなるでしょう?せっかく花を咲かせている意味がなくなってしまいます。花を咲かせなくても、クローン増殖(球根とか、そういうのね)することができるし、そのほうがエネルギーも必要としないのです。花を咲かせるのに、莫大なエネルギーが必要なわけです。事実、木本植物では大量開花した翌年に、個体が死亡してしまうこともあるそうです。自分の花粉が自分のめしべにくっつくと、クローンの子供ができてしまうかもしれない。そしたら、花を作った意味がなくなってしまいます。
でも植物はかしこく、たとえ自分の花粉を受粉してしまったとしても、受精にいたらなかったり、受精しても種子ができなかったり、そういう機構が多く存在します。種子をつくるだけでも、莫大なコストがかかるからです。
それでも、自分の花粉が自分のめしべにくっつくことは、メリットがないことが多いのです。なぜなら、他から運ばれてくるかもしれない花粉をシャットアウトしてしまうかもしれないからです。柱頭が自分の花粉で覆われていると、そうなってしまいます。そこで、雌雄異熟性がでてくるわけです。一つの花の中で、花粉を成熟・拡散させる時期と、めしべが成熟するタイミングをずらす、という戦略です。たとえばミヤマキンバイでは、めしべが先に成熟して、他個体からの花粉を待っているわけです。一定時期がたつと、めしべは機能を失い、今度はおしべが成熟してきて、他個体へ花粉を運んでもらうことになるのです。また、これとは逆の戦略もあります。
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